着任ご挨拶

令和6年12月24日
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新駐英国日本国大使の鈴木浩より、着任のご挨拶を申し上げます。
 
本年6月の天皇皇后両陛下の国賓としての英国御訪問にあたり、英国国民の皆様が両陛下を非常に温かく迎えてくださったことに、まずもって心からの感謝を申し上げたいと存じます。
 
先月、ヒースロー空港に妻の映子と共に降り立ち、12年振りにロンドンに戻った私の胸をよぎったのは、ヒースローから日本に向かった2012年の暮れの想い出でした。
 
当時、私は大使館で広報文化公使を務めていましたが、12月中旬に行われた総選挙当日、総理秘書官を拝命することとなるので直ちに帰国するようにとの命が下りました。その5日後、機上からロンドンの街を眺めながら、いつの日か必ずここに帰ってくると心に誓いました。
 
その後、安倍総理の外交担当秘書官を務めた7年7か月、外務審議官としてG7/G20シェルパを務めた2年間、駐インド・ブータン大使としてデリーで過ごした2年間を経て、ようやく英国に戻ってくることができました。
 
私と英国との縁は、妻の英国の友人たちから始まりました。70年代末に妻の親戚が経営する大学とイートン校が交換留学を始め、妻の実家にはイートン校の生徒が毎夏ホームステイをしていました。その中の一人の家にホームステイした妻は、息子ばかり4人の家庭だったためか、その家の両親から実の娘のように可愛がってもらい、ほぼ2年ごとにその家で夏を過ごすようになりました。娘ができてからは、娘も連れて実家のようにして過ごし、3世代にわたって長い家族の歴史を共有しています。
 
90年代に入ってからは、私もイングランド南西部にあるこの家族を訪問するようになりました。父はマルタの騎士で、かつてアイリッシュ・ガーズに所属していました。その父は、12年前の英国離任直前に亡くなりましたが、母は、90歳を超えてもなお元気に家を守り続けています。早く会いに行って、うねるように広がる草原とその中に点在する森に囲まれて過ごすことが待ち遠しく、もちろん、ご近所の居心地の良いパブでエールに舌鼓を打つことも楽しみにしています。
 
もう一つのたゆまぬ英国との繋がりに、日英桜植樹プロジェクトがあります。2017年、ブレグジットの後でも日英の友情は変わることがないことの象徴として英国中に桜の木を植樹しようと、日英桜植樹プロジェクトを、佐野圭作・英国日本人会会長(当時)と塚本隆史・日英協会理事長(当時)と3人で始めました。プロジェクト開始当時は1,000本を目指したものが、今や8,000本になり、英国各地で花を咲かせています。今回の赴任前に再び3人で集い、1万本を目指そうと誓い合いました。日本では、桜の花の下で宴を催すお花見が春の恒例の楽しみです。英国の皆様にも、是非、桜の花の下でピクニックをして春の1日を各地で楽しんでいただきたいと思っています。
 
日本と英国は、基本的価値観と戦略的利益を共有するかけがえのないパートナーです。広島アコードを道標とし、英国の皆様と手を携えて、両国のグローバル戦略的パートナーシップを力強く前進させていきたいと考えています。
 
着任以来、既に具体的な進展が得られています。まず、安全保障分野では、グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)の推進が日英伊3か国の首脳により確認されました。来年は、空母プリンス・オブ・ウェールズが率いる英空母打撃群の日本への寄港を大いに期待しています。
 
経済分野では、12月15日に英国がCPTPPに加入しました。日英間で、経済版の「2+2」閣僚会合を創設することも決まりました。来年4月には、いよいよ大阪・関西万博が開幕し、ハイレベルの英国代表団の訪日が予定されています。沢山の英国の皆様に万博を訪れて楽しんで頂きたいと願っています。
 
来年は、英国の皆様に、より日本を近く感じていただける1年になります。ウェールズ政府が、来年を「ウェールズにおける日本年」に制定し、さまざまな行事が行われる予定です。7月には、新国立劇場バレエ団のロンドン公演、8月から9月には女子ワールドカップ・ラグビーに日本代表チームが出場し、10月には大相撲のロンドン公演が予定されております。そして、秋には何と言っても、トラファルガー広場が日本一色になるジャパン祭りが行われます。我々も胸が高鳴る日々ですが、皆様に心から楽しんでいただけることを願っております。
 
私は若者交流を重視しており、ワーキング・ホリデー制度を活用して英国の若者が日本に滞在できる期間が、1年から2年に倍増されました。日英関係の未来を担うのは若者であり、大使としてその交流を積極的に促進していくとともに、観光、科学技術、教育、地方交流など、多くの分野で活発な交流が発展していくように尽力して参ります。
 
私と妻は、英国内のさまざまな土地を旅し、地域の皆様と交流できることを楽しみにしております。かつて駐日英国大使だったポール・マデン大使は、日本の地方を隅々まで訪れ、ツイッターで多くを呟き、沢山の日本人の人気を博しました。彼が日本のエキスパートであったように、私たちも是非英国のエキスパートになりたいと願っております。訪問すべき場所、見るべきところを教えてください。時間の許す限り英国を旅したいと願っております。我々の活動をXに投稿しますので、是非、@AmbJapanUK でフォローしてください。
 
それでは、いつかお会いできることを楽しみにしています!
 
 
令和6年12月吉日
 
駐英国日本国大使
鈴木 浩