2021年天皇誕生日祝賀行事における 林肇駐英大使挨拶
令和3年3月3日
皆さま、
本日は、在英国日本国大使館からライブでお送りしております天皇誕生日祝賀行事にご参加いただき、御礼申し上げます。本日は、春の訪れを感じる素晴らしいお天気に恵まれました。実は、2週間前に着任するまでは、寒くて雨模様、そして霧が立ち込めたロンドンを想像しておりましたので、私にとって全く予想外のことです。
天皇陛下は、2月23日に61歳のお誕生日を迎えられました。500名を超えるゲストをお迎えして、このような行事を開催できますこと、妻も私も大変光栄に思っております。
新型コロナウイルス感染症を受けて、天皇皇后両陛下は本年、初めてビデオメッセージという形式で、新年のご挨拶をされました。日本国内そして世界で多くの方々が困難な状況に直面していることに心を寄せられ、今年が皆にとって希望を持って歩んでいくことのできる年になることを心から願われました。天皇陛下のこのお気持ちにお応えしつつ、皆様とともに、陛下の益々のご健勝を祈念できますと幸いです。グロスター公爵殿下とナイジェル・アダムズ外務開発閣外大臣(アジア担当)に、今晩の祝賀に際し、メッセージを頂けることを大変嬉しく思います。
本日は、2週間前に英国に到着した私にとって、このような大勢の皆様の前でお話させていただく最初の機会になります。日英関係を更に促進させる好機に、駐英大使を拝命しましたことを心より光栄に感じています。本年は、これから簡単に触れますが、日英両国の絆にとって、4つの主要な節目を迎えつつあります。
第一は、英国のEU離脱及び英EU貿易及び協力協定を受けた日英経済関係における新たな飛躍です。日英包括的経済連携協定は、今年1月1日に発効し、我々の多くにとって大きな喜びとなりました。本協定は、大変野心的であり、特にデジタル分野において世界で最も先進的な内容を含んでおり、これらはパンデミック及びその後の事態に我々が取り組む際に極めて重要となってきます。この法的枠組みは、貿易・投資における我々の経済パートナーシップに確実に役立つでしょう。またこの協定は、我々の自由貿易国家としての長い歴史を象徴するものでもあります。加えて、日本は、英国が環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)に加入を申請したこと及び同協定を支える大変ハイレベルなルールのために努力する用意があることを、心よりいた歓迎します。
第二に、グローバル課題における日英協力の更なる強化を楽しみにしています。我々は、感染症や気候変動等、幅広い相互に絡み合ったグローバル課題に立ち向かうことなくして、将来が持続可能なものとなり得ないことを、これまで以上に痛感しています。実際、新型コロナウイルスのパンデミックが、皮肉にも、世界のパートナー間の多国間協力が深刻な世界規模の課題に向き合う唯一の方法であることを、我々に雄弁に教えてくれました。今年、英国はG7及びCOP26の議長を務め、そこでは世界の首脳たちが改めてこれらの問題を対面で議論することができるでしょう。それらの会議の成功に貢献するべく、日本は英国と緊密に協力しながら、自らの経験と創意の果実を提供する用意があります。
第三に、日英間の安全保障・防衛協力を促進するための双方の強いコミットメントを目の当たりにすることができ、喜ばしく思います。現状を変えようとする一方的な試みや緊張の高まりを含む平和と安全保障における深刻な課題に直面している中で、日英両国は、それぞれ欧州及びアジアにおける最も緊密な安全保障上のパートナーであるという認識を確認しています。両国は、自由、民主主義、人権、法の支配という共通の価値観に基づき、自由で開かれたインド太平洋に向けて協力を強化しています。今年予定されている空母「クイーン・エリザベス」及び同艦率いる空母打撃群の東アジア訪問が、両国の安全保障・防衛協力を新たなレベルに引き上げる重要な機会となることは間違いありません。
第四は、2021年に日英間の文化・人的交流が加速化することです。日英文化季間は2019年に始まり、英国全土で非常に幅広い日本関連行事を展開してきました。この季間は昨年末で幕を閉じる予定でしたが、コロナ禍における行事の中断や東京オリンピック・パラリンピック競技大会の延期を受けて、本年末まで開催を継続することとなっております。より多くの団体がオンラインコンテンツを活用する中、どこにいても行事に参加いただけることで、日英文化季間がより身近なものになることを期待しています。
本日の行事後半には、日本酒造組合中央会のご厚意により、日本酒のミニセミナー等もご提供します。ご自宅でより一層日本酒をお楽しみいただける切っ掛けになるかもしれません。
ここで、来月、一つの悲劇から10年を迎えることにご注目いただきたく存じます。2011年3月の東日本大震災のことです。震災後、英国政府そして当地の皆様に頂戴した寛大なご支援に、改めて感謝申し上げます。過去10年間、日本は被災地域の復興と創生に向けて大きく歩みを進め、今年4月には新たな復興フェーズに入る予定です。2週間前に同じ地域で強い地震が起きたことは大きな衝撃でした。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。本日の行事の幕開けで国歌を斉唱いただいたザ・キングズ・シンガーズが、震災で亡くなられた方々に哀悼の意を表し、より良い未来への願いを込めた歌を捧げてくださいますので、皆様も一緒に想いを馳せていただけますと幸いです。
コロナ対応において残された課題はまだありますが、これまでも、力を合わせて国際的に協力することで、幾多の自然災害や感染症を乗り越えてきました。この精神と先に述べた4つの節目を念頭に、本年を日英関係の更なる進展に向けた飛躍の一年にしたく、館員一同、しっかり取り組んでまいります。それに当たり、英国の同僚そして友人たる皆様からもご協力・ご支援賜りますようお願いいたします。
ご静聴どうも有り難うございました。
本日は、在英国日本国大使館からライブでお送りしております天皇誕生日祝賀行事にご参加いただき、御礼申し上げます。本日は、春の訪れを感じる素晴らしいお天気に恵まれました。実は、2週間前に着任するまでは、寒くて雨模様、そして霧が立ち込めたロンドンを想像しておりましたので、私にとって全く予想外のことです。
天皇陛下は、2月23日に61歳のお誕生日を迎えられました。500名を超えるゲストをお迎えして、このような行事を開催できますこと、妻も私も大変光栄に思っております。
新型コロナウイルス感染症を受けて、天皇皇后両陛下は本年、初めてビデオメッセージという形式で、新年のご挨拶をされました。日本国内そして世界で多くの方々が困難な状況に直面していることに心を寄せられ、今年が皆にとって希望を持って歩んでいくことのできる年になることを心から願われました。天皇陛下のこのお気持ちにお応えしつつ、皆様とともに、陛下の益々のご健勝を祈念できますと幸いです。グロスター公爵殿下とナイジェル・アダムズ外務開発閣外大臣(アジア担当)に、今晩の祝賀に際し、メッセージを頂けることを大変嬉しく思います。
本日は、2週間前に英国に到着した私にとって、このような大勢の皆様の前でお話させていただく最初の機会になります。日英関係を更に促進させる好機に、駐英大使を拝命しましたことを心より光栄に感じています。本年は、これから簡単に触れますが、日英両国の絆にとって、4つの主要な節目を迎えつつあります。
第一は、英国のEU離脱及び英EU貿易及び協力協定を受けた日英経済関係における新たな飛躍です。日英包括的経済連携協定は、今年1月1日に発効し、我々の多くにとって大きな喜びとなりました。本協定は、大変野心的であり、特にデジタル分野において世界で最も先進的な内容を含んでおり、これらはパンデミック及びその後の事態に我々が取り組む際に極めて重要となってきます。この法的枠組みは、貿易・投資における我々の経済パートナーシップに確実に役立つでしょう。またこの協定は、我々の自由貿易国家としての長い歴史を象徴するものでもあります。加えて、日本は、英国が環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)に加入を申請したこと及び同協定を支える大変ハイレベルなルールのために努力する用意があることを、心よりいた歓迎します。
第二に、グローバル課題における日英協力の更なる強化を楽しみにしています。我々は、感染症や気候変動等、幅広い相互に絡み合ったグローバル課題に立ち向かうことなくして、将来が持続可能なものとなり得ないことを、これまで以上に痛感しています。実際、新型コロナウイルスのパンデミックが、皮肉にも、世界のパートナー間の多国間協力が深刻な世界規模の課題に向き合う唯一の方法であることを、我々に雄弁に教えてくれました。今年、英国はG7及びCOP26の議長を務め、そこでは世界の首脳たちが改めてこれらの問題を対面で議論することができるでしょう。それらの会議の成功に貢献するべく、日本は英国と緊密に協力しながら、自らの経験と創意の果実を提供する用意があります。
第三に、日英間の安全保障・防衛協力を促進するための双方の強いコミットメントを目の当たりにすることができ、喜ばしく思います。現状を変えようとする一方的な試みや緊張の高まりを含む平和と安全保障における深刻な課題に直面している中で、日英両国は、それぞれ欧州及びアジアにおける最も緊密な安全保障上のパートナーであるという認識を確認しています。両国は、自由、民主主義、人権、法の支配という共通の価値観に基づき、自由で開かれたインド太平洋に向けて協力を強化しています。今年予定されている空母「クイーン・エリザベス」及び同艦率いる空母打撃群の東アジア訪問が、両国の安全保障・防衛協力を新たなレベルに引き上げる重要な機会となることは間違いありません。
第四は、2021年に日英間の文化・人的交流が加速化することです。日英文化季間は2019年に始まり、英国全土で非常に幅広い日本関連行事を展開してきました。この季間は昨年末で幕を閉じる予定でしたが、コロナ禍における行事の中断や東京オリンピック・パラリンピック競技大会の延期を受けて、本年末まで開催を継続することとなっております。より多くの団体がオンラインコンテンツを活用する中、どこにいても行事に参加いただけることで、日英文化季間がより身近なものになることを期待しています。
本日の行事後半には、日本酒造組合中央会のご厚意により、日本酒のミニセミナー等もご提供します。ご自宅でより一層日本酒をお楽しみいただける切っ掛けになるかもしれません。
ここで、来月、一つの悲劇から10年を迎えることにご注目いただきたく存じます。2011年3月の東日本大震災のことです。震災後、英国政府そして当地の皆様に頂戴した寛大なご支援に、改めて感謝申し上げます。過去10年間、日本は被災地域の復興と創生に向けて大きく歩みを進め、今年4月には新たな復興フェーズに入る予定です。2週間前に同じ地域で強い地震が起きたことは大きな衝撃でした。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。本日の行事の幕開けで国歌を斉唱いただいたザ・キングズ・シンガーズが、震災で亡くなられた方々に哀悼の意を表し、より良い未来への願いを込めた歌を捧げてくださいますので、皆様も一緒に想いを馳せていただけますと幸いです。
コロナ対応において残された課題はまだありますが、これまでも、力を合わせて国際的に協力することで、幾多の自然災害や感染症を乗り越えてきました。この精神と先に述べた4つの節目を念頭に、本年を日英関係の更なる進展に向けた飛躍の一年にしたく、館員一同、しっかり取り組んでまいります。それに当たり、英国の同僚そして友人たる皆様からもご協力・ご支援賜りますようお願いいたします。
ご静聴どうも有り難うございました。