林大使夫妻からの離任ご挨拶
令和6年10月24日

新型コロナ・ウィルス感染症の猛威が吹き荒れる令和2年(2020年)12月に林 肇が駐英国特命全権大使に任ぜられた後、英国で新型コロナ・ウィルスに対するワクチン接種が軌道に乗り始めた翌令和3年(2021年)2月に、私達二人は英国ロンドンに赴任しました。その後、今日まで4年弱にわたって、当地にて日英関係の最前線に立ち、多くの英国人の方々とお会いし、また在留邦人の皆様とも親しくさせていただきました。間もなく任務を終えて帰国する運びとなりましたところ、この間、私達に対して、多くの英国人の方々や在留邦人の皆様からいただいたご協力やご支援、あるいは激励に対して、心から感謝を申し上げます。
私達が英国で活動してきた4年弱の期間は、まさに激動の時代だったと申し上げて良いでしょう。新型コロナ・ウィルス感染症の大流行は、ここ英国においても、ほぼ全ての人を苦しめ、多数の犠牲者を出しました。その中で、英国が世界の中でいち早く国民へのワクチン接種に踏み切り、多くのボランティアの方々をも動員するなど短期間で体制を整備し、ワクチン接種を強力に進めたことは、大変に印象的でした。私達も、ロンドン市内サウスケンジントンの科学博物館の展示スペースに臨時に設けられたワクチン接種場において、沢山の市民の方々と共に列に並んで接種を受けたことが、昨日のことのように鮮明に思い出されます。
この間、70年もの長きにわたり英国の伝統を継承して来られたエリザベス2世女王陛下が崩御され、チャールズ3世国王陛下が即位されるという、歴史的な出来事がありました。女王陛下は、日本の皇室との交流を通じて、日英関係に多大な御貢献をなされましたが、同陛下の国葬に対して、日本から天皇皇后両陛下が御参列になったことは、日英関係が特別に重要な意味合いを持つことを示すものであったと感じました。また、翌年のチャールズ3世国王陛下の戴冠式には、秋篠宮皇嗣同妃両殿下が御出席され、日本の皇室と英国の王室の深い御親交を示されたと感じました。
この時期は、また、英国が文字通りEUから離脱し、EU加盟国ではない英国として、新たに国際社会に船出した時期でした。この新たな英国の国際社会への対応に対して、我が国は、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有し、共にG7のメンバーとして国際社会の中で様々な戦略的利益を共有する国同士として、英国とのパートナーシップの強化を一貫して追求して来ました。日英間には、19世紀中期から長い時間をかけて築き上げた様々な蓄積がありますが、こうした先人達が築いた基盤の上に、この数年間の両国関係者の努力が加わって、日英関係は、かつて無いほどの強さ、幅広さ、深さを実現することが出来たのではないかと感じています。
時あたかも国際情勢がますます厳しさを増し、ロシアによるウクライナに対する国際法を踏み躙る侵略や、中東地域の激動、インド太平洋地域における一方的な力による現状変更の試みなどが見られる中で、日英間のパートナーシップの強化は、両国にとって必然的な選択であったと言うことができるでしょう。こうした日英関係の姿を文書で示したものが、令和5年(2023年)5月のG7広島サミットの機会に、当時の岸田文雄総理とリシ・スナク首相が発表した「強化された日英のグローバルな戦略的パートナーシップに関する広島アコード」でした。
新型コロナ・ウィルスによってもたされた災厄を、日英両国を含む国際社会が克服し、感染症の世界的流行によって妨げられて来た社会・経済・文化活動がコロナ前の水準に戻る中で、日英間の様々な交流や協力が一層活発になる傾向が見られています。政治や外交、安全保障や防衛、経済やビジネスの分野は言うに及ばず、科学技術、教育、文化、スポーツ、観光等ほぼ全ての分野において、日英間の交流や協力が発展を見せています。本年(2024年)から抜本的に拡充した日本のワーキング・ホリデー制度と英国のユース・モビリティ・スキームに基づき、より多くの若い世代の方々が両国間で交流することが出来るようになったことも、こうした日英関係の一層の発展に資することが期待されます。
このような中で、本年(2024年)6月に、26年ぶりとなる我が国の天皇皇后両陛下の英国国賓御訪問が行われたことは、日英間の強い絆を象徴するものとなりました。共にオックスフォード大学に留学され、英国に深い思いをお持ちである天皇皇后両陛下は、チャールズ3世国王陛下及びカミラ王妃陛下をはじめとする多くの英国人の方々から温かい歓迎と手厚いおもてなしを受けられました。私達は、この御訪問の準備に携わるとともに、御訪問された天皇皇后両陛下と間近でご一緒させていただくという、得がたい経験をすることが出来ました。
以上のように、帰任を前に、私達の英国における日々を振り返ってみますと、このような日英関係の発展の時期に駐英国日本国大使及び同夫人として活動し、微力ながらも両国関係の発展のために尽力出来たことは、私達にとって忘れることの出来ない喜びとなるものです。これも、日英関係を支え、ご協力やご支援を継続していただき、あるいは激励して下さった方々があってのことだと感じています。
本年(2024年)7月には、総選挙を経て、英国にキア・スターマー首相が率いる労働党政権が誕生しました。また、10月には、我が国において、石破茂総理を首班とする新しい内閣が成立し、衆議院議員総選挙も行われます。これからは、両国の新たな政治指導者の下で、日英間の協力を形作り、進展させていくことが必要となります。私達は、間もなく帰国いたしますが、共に、これからは専ら日本において、これまでとは違った形で、新たな日英関係の発展を支援する立場に立ちたいと思っています。
皆様、どうも有難うございました。さようなら。どうかお元気で。
私達が英国で活動してきた4年弱の期間は、まさに激動の時代だったと申し上げて良いでしょう。新型コロナ・ウィルス感染症の大流行は、ここ英国においても、ほぼ全ての人を苦しめ、多数の犠牲者を出しました。その中で、英国が世界の中でいち早く国民へのワクチン接種に踏み切り、多くのボランティアの方々をも動員するなど短期間で体制を整備し、ワクチン接種を強力に進めたことは、大変に印象的でした。私達も、ロンドン市内サウスケンジントンの科学博物館の展示スペースに臨時に設けられたワクチン接種場において、沢山の市民の方々と共に列に並んで接種を受けたことが、昨日のことのように鮮明に思い出されます。
この間、70年もの長きにわたり英国の伝統を継承して来られたエリザベス2世女王陛下が崩御され、チャールズ3世国王陛下が即位されるという、歴史的な出来事がありました。女王陛下は、日本の皇室との交流を通じて、日英関係に多大な御貢献をなされましたが、同陛下の国葬に対して、日本から天皇皇后両陛下が御参列になったことは、日英関係が特別に重要な意味合いを持つことを示すものであったと感じました。また、翌年のチャールズ3世国王陛下の戴冠式には、秋篠宮皇嗣同妃両殿下が御出席され、日本の皇室と英国の王室の深い御親交を示されたと感じました。
この時期は、また、英国が文字通りEUから離脱し、EU加盟国ではない英国として、新たに国際社会に船出した時期でした。この新たな英国の国際社会への対応に対して、我が国は、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有し、共にG7のメンバーとして国際社会の中で様々な戦略的利益を共有する国同士として、英国とのパートナーシップの強化を一貫して追求して来ました。日英間には、19世紀中期から長い時間をかけて築き上げた様々な蓄積がありますが、こうした先人達が築いた基盤の上に、この数年間の両国関係者の努力が加わって、日英関係は、かつて無いほどの強さ、幅広さ、深さを実現することが出来たのではないかと感じています。
時あたかも国際情勢がますます厳しさを増し、ロシアによるウクライナに対する国際法を踏み躙る侵略や、中東地域の激動、インド太平洋地域における一方的な力による現状変更の試みなどが見られる中で、日英間のパートナーシップの強化は、両国にとって必然的な選択であったと言うことができるでしょう。こうした日英関係の姿を文書で示したものが、令和5年(2023年)5月のG7広島サミットの機会に、当時の岸田文雄総理とリシ・スナク首相が発表した「強化された日英のグローバルな戦略的パートナーシップに関する広島アコード」でした。
新型コロナ・ウィルスによってもたされた災厄を、日英両国を含む国際社会が克服し、感染症の世界的流行によって妨げられて来た社会・経済・文化活動がコロナ前の水準に戻る中で、日英間の様々な交流や協力が一層活発になる傾向が見られています。政治や外交、安全保障や防衛、経済やビジネスの分野は言うに及ばず、科学技術、教育、文化、スポーツ、観光等ほぼ全ての分野において、日英間の交流や協力が発展を見せています。本年(2024年)から抜本的に拡充した日本のワーキング・ホリデー制度と英国のユース・モビリティ・スキームに基づき、より多くの若い世代の方々が両国間で交流することが出来るようになったことも、こうした日英関係の一層の発展に資することが期待されます。
このような中で、本年(2024年)6月に、26年ぶりとなる我が国の天皇皇后両陛下の英国国賓御訪問が行われたことは、日英間の強い絆を象徴するものとなりました。共にオックスフォード大学に留学され、英国に深い思いをお持ちである天皇皇后両陛下は、チャールズ3世国王陛下及びカミラ王妃陛下をはじめとする多くの英国人の方々から温かい歓迎と手厚いおもてなしを受けられました。私達は、この御訪問の準備に携わるとともに、御訪問された天皇皇后両陛下と間近でご一緒させていただくという、得がたい経験をすることが出来ました。
以上のように、帰任を前に、私達の英国における日々を振り返ってみますと、このような日英関係の発展の時期に駐英国日本国大使及び同夫人として活動し、微力ながらも両国関係の発展のために尽力出来たことは、私達にとって忘れることの出来ない喜びとなるものです。これも、日英関係を支え、ご協力やご支援を継続していただき、あるいは激励して下さった方々があってのことだと感じています。
本年(2024年)7月には、総選挙を経て、英国にキア・スターマー首相が率いる労働党政権が誕生しました。また、10月には、我が国において、石破茂総理を首班とする新しい内閣が成立し、衆議院議員総選挙も行われます。これからは、両国の新たな政治指導者の下で、日英間の協力を形作り、進展させていくことが必要となります。私達は、間もなく帰国いたしますが、共に、これからは専ら日本において、これまでとは違った形で、新たな日英関係の発展を支援する立場に立ちたいと思っています。
皆様、どうも有難うございました。さようなら。どうかお元気で。
令和6年10月24日
駐英国日本国特命全権大使 林 肇
同 妻 林 治子
駐英国日本国特命全権大使 林 肇
同 妻 林 治子