海上自衛隊の艦艇乗りである私にとってグリニッジやポーツマスといった海軍縁の地を訪ねる度に英国勤務の実感を強めています。また、約10年前の英軍学校への留学以来、二度目となる英国勤務を防衛駐在官(Defence Attache)として経験できることはこの上ない喜びです。
防衛駐在官という役職は、一般的にはあまり馴染みの無いものではないでしょうか。防衛駐在官は、防衛省から派遣された自衛官(英国には海上自衛官が派遣されています)であり、その仕事は主に自衛官としての経験などを活かしてイギリスの国防省や陸海空軍関係者及び在英の各国の駐在武官との交流を通じて軍事情報の収集をしたり、広く日本の安全保障政策や自衛隊の活動などについて正しく理解してもらえるように努めることです。
国際的には駐在武官と呼称し、大使館などに勤務する軍人である外交官を指します。この意味では、防衛駐在官は大使館で勤務している他の外交官とは全く異なった存在です。特徴的なのは、私の仕事の多くが他の外交官には見られない駐在武官団という大きな外交団を通じて行なうことです。
特に世界の中でもロンドンの武官団の規模は非常に大きく、陸・海・空軍ごとに各武官団を構成しており、3軍種を合わせると世界各国から約200名にも及ぶ武官が集まって来ています。歴史的にも、また現代においてもあらゆる面で国際社会に大きな影響力を与え、多くの情報が集まってくる世界の中心のひとつである英国という国柄を考えれば、これはごく自然なことでしょう。この武官団を通じてのほとんどの外交活動は、夫婦単位が基本であることから、必然的に日本にいる頃に比べると夫婦で行動する時間が格段に増えました(!!)。また、武官団の行事には家族を含めた活動が多くあることや相互に自宅に招く機会もあり、武官団の交流は、他のどの外交団活動に比べても、より深く、濃いものだと思います。たとえ軍種が異なるとしても軍人としての誇りを持ち、軍人だからこそお互いに理解し合えるという独特なコミュニティーでもあります。家族ぐるみで国際交流ができるというのも武官団としてのメリットでしょう。
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