英国最大の公共サービス放送BBCが視聴者にどのような番組を放送・配信し、社会の中でどのような位置づけになっているのかを国外から知るのは容易ではありません。どの国の放送局も制作したコンテンツは、原則国内でのみ視聴できるようになっているからです。BBCは時として「国営」と間違って紹介されることもありますが、視聴世帯から放送受信料を徴収して活動する「公共放送」であり、社会を構成する「みんなのもの」です。インターネットが私たちの生活に欠かせなくなった今、メディア環境は大きく変わっています。BBCのライバルはかつては他局でしたが、今はネットフリックス、アマゾンプライム、ティックトックやユーチューブと競い、存在価値を認めてもらわなければなりません。開局から約100年、BBCが伝えてきたことを辿りながら、公共放送やメディアの未来を考えてみましょう。
在英ジャーナリスト。報道の自由の促進と保護を目的とする「国際新聞編集者協会(IPI)」(本部ウィーン)加盟。1981 年、成城大学文芸学部芸術学科卒業(映画専攻)。外資系金融機関勤務後、「デイリー・ヨミウリ」(現「ジャパン・ニューズ」)の記者を経て、2002 年に渡英。
英国や欧州のメディア事情や政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。「新聞研究」(日本新聞協会)、「Galac」(放送批評懇談会)、「メディア展望」(新聞通信調査会)など。著書に、「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)、「フィナンシャル・タイムズの実力」(洋泉社)、「英国メディア史」(中央公論新社)、「日本人が知らないウィキリークス」(共著、洋泉社)、共訳「チャーチル・ファクター」(プレジデント社)。BBC のこれまでを綴る本を近日出版予定。